現在大阪・心斎橋PARCOで開催中の『GAN-BAN 25th Anniversary Special Exhibition TIME CAPSULE2025: A FUJI ROCK Odyssey - 時空を超えるフジロック展 -』
2000年12月に東京・渋谷でオープンして以来、音楽カルチャーを発信し続けてきたフジロックのオフィシャルショップ岩盤/GAN-BAN。早割チケットを求めて待機列に並び、苗場ではGAN-BAN SQUAREで夜な夜な踊り、『GAN-BAN NIGHT』に熱狂した記憶を持つフジロッカーも多いはず。
そんな25年の歩みを記念した『GAN-BAN 25th Anniversary Special Exhibition TIME CAPSULE2025: A FUJI ROCK Odyssey - 時空を超えるフジロック展 -』を、2026年6/27(土)~7 /12(日)まで心斎橋PARCO 14F「PARCO HALL」で開催。昨年末から今年1月にかけて渋谷PARCOで好評を博し、その巡回開催となる今回のフジロック展の見どころをご紹介。
開催間近の熱気を映し出すエントランスエリア
まず目に飛び込んでくるのが『FUJI ROCK FESTIVAL'26』の会場マップやラインナップが並ぶエントランスエリア。メイン4ステージを中心とした出演アーティストのバイオグラフィーやライブ映像などもあり、開催間近のフジロックへの興奮を掻き立てる演出に。
このエントランスは冬の渋谷PARCOでの展覧会にはなかったエリアで、開催間近のこの時期だからこその演出になっている。SNSやフライヤーで見慣れたキービジュアルのデザインやラインナップの文字列も、これほど大きく展示されると、一つの作品のような存在感を放っている。
あの夏のひとときへと誘う〈記憶への入口〉
大きく3つのエリアに分かれた今回のフジロック展。存在感のあるメインビジュアルと開催ステートメントに導かれた先の〈記憶への入口〉では、関和亮氏による映像作品を展開。藤井風やBOOM BOOM SATELLITES、OK GO、サカナクションなど数々のミュージックビデオをはじめ、テレビCMやドラマ、映画も手がけてきた関氏は岩盤/GAN-BANとはスタート以前から関わり、DJ/VJとしても歩みをともにしてきた。
8枚のモニターが輪唱のように移り変わる中で、遡るようにフジロックの写真や映像がフラッシュ。そこへDJプレイのように差し込まれる「GAN-BAN SQUARE」のロゴが見るものをゾクゾクさせる、そのデザインも、関氏によるもの。
対面には、富士天神山で開催された1997年のフジロックのオーディエンスが壁一面に広がり、奥に進むにつれて粒子が荒くなっていき、次なる〈タイムカプセル〉のエリアへ。ここから、フジロックを巡る記憶の旅が始まっていく。
脳内の記憶に居合わせたような体感〈タイムカプセル〉
美術デザイナー・松本千広氏による〈タイムカプセル〉には、ありとあらゆるフジロックのグッズを展示。ペンやポケット灰皿、マグカップ、ライター、リストバンド、缶バッジ、ギターピック。クローゼットには数々のTシャツ、乱雑に積まれたパンフレットや往年の『CROSSBEAT』。壁にはフジロックやGAN-BAN NIGHTを彩った写真や、日高正博氏の10周年メッセージ、GAN-BAN SQUAREのサイン会待機列の看板までが並んでいる。かと思えば昨年のBREWDOGとのコラボ缶もあり、時系列にとらわれない誰でも記憶が蘇るエリアになっている。
最大の見どころは、エリア中央を彩る232枚ものフジロックのライブフォトと歴代ラインナップをあしらったTシャツのインスタレーション。数々のスターたちの若き日の姿を一枚一枚めくりながら、自分だけのフジロックの記憶をたどることができる。「あの年、このステージ、この瞬間」を思い返していくと、懐かしい思い出はもちろん、意外と曖昧になっていた記憶まで蘇ってくることも。(なお、このTシャツのライブフォトは撮影禁止なのでご注意を)整然と並べられているのではなく、脈絡なく積み重ねられているからこそ、まるで脳内の記憶を歩いているような、フジロックの思い出をたどっているような、そんな感覚に包まれる。


苗場へ向かう道中でおなじみの群馬・月夜野周辺で育った松本氏。本展覧会でも存在感を放つマネキンのモチーフは、学生時代、通学電車で疲れ果てた姿のまま乗り込んでくるフジロッカーたち。心地よい疲労と余韻、そして「また来年」という高揚感が入り混じった、あの独特の感覚が鮮やかによみがえり、越後湯沢駅から新幹線に乗り込む帰路の光景が思い浮かぶ。
扉や吊り革、荷棚だけでなく、Tシャツやベッドまで、あらゆるものが天井から吊るされ、ゆらゆらと揺れる空間も印象的だ。その不安定な浮遊感は、時間の経過とともに形を変え、曖昧になりながらも心の中に残り続ける記憶そのものを表現しているかのようだ。
そして、この空間の音楽を手がけるのは、SUGIURUMN。アンビエントやダブを基調とした音像に、エントランスやグッズ販売エリアで流れる今年の出演アーティストの音源が混ざり合う。その響きは、GAN-BAN SQUAREでオアシスやレッド・マーキーの喧騒が溶け合うようでもあり、懐かしさをさらに掻き立てる。足元に目を向けると、音源を流しているのもiPodのような、あの時代の懐かしいポータブルプレーヤー。細部まで徹底された意匠が見てとれる。
いくら時間があっても足りない〈タイムカプセル〉。時間の許す限り、フジロックの記憶と戯れてほしい。
表現に込められたエネルギー〈現在、そして未来へ〉
ゆうに1,000点を超えるであろう展示の記憶を抜けると、一転して中小の世界が広がる。
岩盤/GAN-BAN初代店長でもある現代美術家・Shohei Takasaki氏による2点のキャンバスコラージュ。
近づけばフライヤーやTシャツのディテールが見えてくる。しかし、少し距離を置くと、それらはひとつの塊となり、その正体は判然としなくなる。それでも、作品と向き合うほどに、言葉では説明しきれない圧倒的な存在感がじわじわと立ち上がってくる。まるで〈タイムカプセル〉に封じ込められた膨大な記憶が凝縮され、ひとつの塊として目の前に現れたかのような、具象と抽象を行き来する展示構成の妙も感じられる。
隣には、Kamikene氏によるアナログシンセやインターフェース機材をコラージュしたインスタレーション。電子回路の動作確認に使われるオシロメーターへ音をフィードバックさせ、刻々と表情を変えるビジュアルを生み出している。
そして、ビデオチーム「最後の手段」が手がける、5分半に及ぶ映像作品へ。
カラフルなモチーフが流れるなか、たびたび思い出のライブフォトがババーンと登場するダイナミックな演出。コロナ禍以降のフジロックをフィーチャーした、ライブフォトを通して近年の思い出が蘇ってくる映像で展示の最後へ繋げていく。
展覧会を通して違う表情が見えるスペシャルミュージアムショップ
展示を抜けた先には、スペシャルミュージアムショップのエリアが登場。見どころは今年もオレンジ・エコーを手がける『橋の下世界音楽祭』チームとともに木工ステージを制作したZERO ACTION ARCHITECTによるアーチ状のオブジェ。「岩盤」「GAN-BAN」「がんばん」「音楽」「富士」「ROCK」など、さまざまな文字がチェーンのようにつながり、一見すると無秩序に組み合わされているようにも見える。しかし、その一つひとつの言葉が結びつくことで、岩盤というカルチャーやフジロックを取り巻く多様な人や音楽、文化のつながりを象徴するような存在となっている。
これまでのフジロックを振り返るだけでは終わらない。積み重ねられた記憶や熱狂に触れた先には、今年の夏のフジロックがある。過去から現在へ、そして未来へ――この展覧会をきっかけに、今年の苗場への期待をさらに膨らませてほしい。